Strange Forest

 

遠い昔に見た光景が忘れられず、ずっと探し求めている。もはや現実だったのか幻だったのかも、今となっては大した問題ではないのかもしれない。

 

あれはどこだったか。母の用事で訪れた古い一軒家。洋風の装飾が施された白い門は、入り組んだ角が黒く汚れていて、経てきた年月を醸し出していた。母が呼び鈴を押している。ここは少し高台という事もあり、すぐ側にまで森の境目がきていて、カビ臭い土の匂いがしていた。木々を縫う白い道…。母の手を逃れて私は奥へと入って行ったのだった。

 

白い猫足テーブルの上。ピンクのバラが入った花瓶の奥から、焼き菓子を差し出す手が見える。顔を上げると、丸い顔の家主が『どうぞ』と微笑んでいた。

 

記憶に空白がある。何十年もの間探し求めてきた結論として、私が求めているものは、この記憶の中にあるのではないかと思っている。

 

 

藤田直美

 

兵庫県出身。現代美術家協会会友。

油彩を中心に空想画や心象画を描きます。

 

 

 

ぼやけた記憶の世界は、嘘はないけれど確かなものもなく、

感情的ではないけれど、束縛に似た疎ましさを感じさせます。

誰しも遠い記憶というものには、優しさとなるのか痛みとなるのか

 

紙一重のスリリングさが含まれていますが、できる事なら優しく暖かいものとして残したいと思います。

 

 

 

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